底なし沼
家を出たい。
でも、母親は金を援助してくれない。
出たいんだが、この家からは出たくない。
「あんな人いたんだ」
近所から後好奇の目で見られるのが死ぬほどイヤなんだ。
いや、そんなものほとんどないのかもしれない。
でも、父親は子供のころから事あるごとに言ってきた。
「近所の目」「世間体」
そういった僕に不要な幻想と罪悪感を植え付けた。
それも、僕が引きこもりになってしまった原因の一つだと思う。
でも、そんな事はもうどうでもいい。
今更何もかもを人のせいにしたって仕方ない
ただ、新天地でやり直したいんだ。はじめから
だってここは全てが狂っているから。
親子関係、距離感、あらゆるものが僕にとっては。
生まれたときから既に狂っていた。
人の心のない彼らには、僕の精神的な苦痛など理解出来ない。
いつも詰られ、理不尽に耐え、味方などいないままこれでも必死に適応してきたんだ。一人ぼっちで闘っていた。
条件付の愛情しかくれなかった母親の顔色ばかり伺い偽り、言いなりになり自分を演じ続け、やがて操り人形は動かなくなり、崩れ落ちた。
こう着状態になってもう11年が過ぎた。
それでも埒が開かないってあいつにはわからない。
馬鹿だから、「働け」同じ台詞を繰り返すだけの堂々巡りだ
どうしようもない位馬鹿なんだ。現実が理解出来ないらしい
もう、何もかもすべて終わらせたいんだ。
こんな親のいいなりの偽りの人生も
破壊、そしてその向こう側にある再生、創造へと
次の段階へといきたいのだが、母親は一円も援助してくれない。
生活に精一杯なんだ。だから何も言わない。
僕が自分で働くしかないらしいのだが、僕は何もできない。
子供のまま大人になってしまった。
でもその厳しい現実は決して容赦などせず、徹底的に僕を打ちのめす。
破れ、ボロボロでの僕の肉体は、深い深い 海の底。
指先一本動かぬまま、混沌の海に飲み込まれてしまった
助けてと呼びかけても、同じ言葉ばかり吐くあの魔物しかいない。
彼女の姿が魔物に見えるようになったのもここ数年の話である。